精神の木 /服部 剛
 
僕、という人の 
頭蓋骨にぴし、と亀裂が入ったら 
無数の 存在 という二文字があふれ出て 
ばらら、ばら、ばら 
僕の周囲に散らばり、落ちた。 

ふいにしゃがんだ、僕は 
 存在 という無数の文字を 
夢中で両手に掻き集め 
頭蓋骨の割れ目から 
しゅる、しゅる、しゅるる… 
もう一度、入れた。  

――この体内には精神の木がいるらしい―― 

今、この瞬間(とき)も  
みるみる枝葉を広げている 






 
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