手紙/シホ.N
電話は苦手なので
手紙を書いた
長い長い手紙になった
読み返して
不要なところを削っていくと
短くなった
三行になった
そのうち二行は
はじめの挨拶おわりの挨拶
こういう手紙特有の冗長な挨拶は
好きじゃないと僕は思った
窓から夜気がしみこんでいた
小バエが一匹便箋にとまった
失礼なやつだ
虫の一匹や二匹
壁のあたりを這っ飛んでいる分には構わないが
いやでもこの便箋にとまるというなら
僕はもう容赦しない
と指で小バエをひねりつぶした
虫にも世界観があるものなら
この僕の手は
神の手
そうこうしている頃に
僕は電話をもってないわけだから
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