批評の言葉(メモ)/中川達矢
べき相手によって扱う言葉は異なり、何より、言葉の連鎖によって説明するしかない。「コートは〜〜ぐらいの大きさで、中央に〜〜ぐらいの円があり、両端にはゴールがある。そして、この時この場所におけるサッカーでは、審判が黒い服をまとい、左側は青の服、右側は赤の服を着ていた……」と延々と続く。このように、一枚のイメージを言葉で伝えるためには、同時的にそのイメージを伝えることはできず、一つ一つの文を重ねることで伝えることしかできない。これが線条性という言葉の性質である。
詩の一行一行は、そのような線条性の効果そのものと結びつき、作品に書かれた一行によって作中世界の一部を描き、改行されるごとに、作中世界がより描かれていく。また、詩の場合、厄介なのは、それが一枚の額縁の中で描かれていることもあれば、複数の額縁を利用して作中世界が描かれていることもある。
画家が筆をとり、一筆一筆の積み重ねによって作品を描くこと。その様子を詩の一行一行に置き換えていただければ、無人称の語り手における作品もイメージしやすいのではないだろうか。
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