蝶はくちびるから生まれる/りゅうのあくび
 
真夏の青空を
吸い込む
くちびるから
生まれる蝶の
羽根の色は
南太平洋の耀く
海の色よりは
ずっと淡く
抜けるような天空の
青空の色に近い

在りし日の情熱からは
傍らで誰かを
恋する想いが生まれる
季節だったりする

まるで小さな恋心のように
蝶はゆっくりと
羽ばたきながら
暖かくてしっとりとした
風に乗って
宙を舞いながら
飛んでいく

胸の奥では
まだそっと
伝えることを待っている
さなぎのままの
静かな想いがある

焦げるように熱い
この夏だけのために
くちびるから
青く透明な蝶が生まれ
可憐な花に停まって

少し羽根を休めながら
また夜空へと
旅の支度をする

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