新たな道標/ヒヤシンス
 

やまびこの遠く澄み渡るを聴く。この連嶺の偉大さよ。
夏にいまだ白く残る雪を携えて、今、この世界に君臨する。
比類なき荘厳。重厚な交響楽。
私はただその頂にて感嘆し、言葉を失う。

母なる大地に聳え立つ巨人らよ。
私はお前の肩越しに広がる雲海をも大切なもののように眺める。
その手で掴めそうな厳格なものを賛美するが、
讃えても讃えきれない芸術に情けも無く息を飲むばかりだ。

情をこらえ感覚だけでものを語ろうとしていた自分を嘲る。
この自然美に心を打たれないものがあろうか。
私は今こそ私の半身と熔解する。
 
午後の始まりに私はこの光景を胸に刻み別れの準備をする。
大いなる天地の建造物よ。美の巨人よ。
私はお前を忘れない。お前こそ私の新たな道標にふさわしい。

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