声は凱歌を歌う前に/平瀬たかのり
 
アウェイ芝生席
 拳は一斉に夜空を突き上げて
 選手たちが駆けてくる
 
  〈意識レベルが低い人に俗塵を持ち込まれたくなかったのだ。〉

 とうとう笛は鳴って
 なみだ汗鼻水崩れ落ちる化粧
 もみくちゃ雄叫びの渦
  (意識レベルが低い人に)
 少年よここにいるか
 君はいくつになった
 勝ったぞ
  (俗塵を持ち込まれたくなかったのだ)
 ぼくが選んでずっと大好きなままで
 きみが選んできっと大好きなままの
 セレッソ大阪が
 ガンバ大阪に
 今、勝ったんだ
  
  〈みなさんもその気持ちはおわかりだろう。〉
 
 言葉よ
 ぼくはまちがっているのだろう
 それは正しいのだろう
 ならば声よ
 まちがったまま
 凱歌を歌う前に
 吠えてつんざけ
 おまえに耳を塞ぐ
  (みなさんもその気持ちはおわかりだろう。)
 敵を
 
 
 (〈〉()内引用部、2011年、現代詩人会会報に掲載され、HPに公開されていた同会当時某理事の『入会担当者からのお願い』の冒頭部分)

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