モンマルトルへの手紙/月乃助
 
ジャンヌ・
エビュテルヌ へ、


類(たぐい)なく

五本、僕には絵筆を自由にする指がある

夏の陽射しのなかで

あからさまに 風景を絵画にきりとりながら

固定らしき均整をもとめる 学院に唾をする

それなのに、朝起きればときに

あらゆる隷属する 自分を欲した

完全に 秩序をうたがわず

服従に 甘んずるもの

矛盾するための十代

僕たちにのみ いのちを変える 力があるなら

僕らは、商人のように払ったものの対価を

手にしようとは、しない

つまらぬ大人たちに 握手をするごと

鋼の手袋をする 使い捨てのそれを

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