紅の日/ヒヤシンス
森のひそやかな言葉を聞くとき、私は帰ってきたと実感する。
待ちわびた月日が私に深い瞑想の扉を開かせる。
鳥達よ、歌っておくれ。私は今ここにいる。
しかし私の傍らには今はもう誰もいない。
暮れゆく日差しが木々をかすめて私を照らす。
足元に見つけたトルコ石でさえ今はもう私の心を揺さぶらない。
憂鬱と倦怠。
人の親になるという事を大人になる事とずっと勘違いしていた。
私の翼は疲れやすいので、という理由、ただそれだけで私は再びこの地へ来た。
森はそんな私を受け入れて、しっとりとした優しさで私の翼を癒すのだ。
なぜだろう。人の優しさに傷ついていた魂がゆったりと安らいでゆく。
とっぷり暮れた山荘で、尊い命を想う心が再び芽生えた。
ランプに照らされた机に向かい、開かれた詩集の文字を撫でてみる。
それでもやはり、大人になりきれていない私の傍らには誰もいないのだ。
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