蛍/
カワグチタケシ
夏草に息をつまらせながら
とぎれとぎれのたよりない光跡を追いかける
光跡は小さな流れに出会う
同じ場所で僕たちも出会った
滝のしぶきがかかる地下道を通り抜ける時
すれちがう幸せな記憶をたよりに
僕たちも彼らも、光を
蛍を追いかけている
いずれ雨期はあけるにちがいない
が、まだその予兆さえなかった
ただその夜だけが澄んでいた
そのたよりなさゆえに
これらの日々はかならず記憶されるだろう
折にふれて思い出されるだろう
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