夢を食む兎/ヒヤシンス
 

沁み入る夏の夕べに友と語る。
各々は何処へ行こうとしているのかを。
目指すべきものは見えているのだ。その心の中に。
日毎多様化する手段に混乱し、目の前のハイライトに手を伸ばす。

澱んだ白い煙の漂いを、魂の消耗と見るか、それとも窓の向こう、
夕映えの空にうっすらと懸かる雲と見るか。(それは実に美しく自由であった)
私らは構想の額縁から抜け出して行動しなければならないと知る。
それは鳥が卵の殻を必死に破ろうとするかのように。

厳しい現実から誰一人として逃れる事など出来ない。
それならばいっその事その懐に飛び込んで内側から食い破ろうと友は言う。
成程それは面白い。募る同人各々が同じ気持ちを持つのであれば。
 
人は隣人の鏡を見て己を知る事が出来るのだ。
私らは共にゆく。それがたとえ弱者の集まりであろうとも。
弱者の塊。清廉な魂の塊は驕れる強者の鼻柱を挫き、人生の往来を堂々と歩く。

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