子午線をこえる風/月乃助
 
{引用=
さだめらしき願いを ひとつ知りました


六月の
嵐にひかえる空は
細心のあやうい平衡と ためらいに似た心地なさを 具(よろ)う


見あげれば
流れは岩にわかれ
我とはなしに 落ちる水は、龍のようです


右には巨きな栗の木と あとは、
まわりはすべて 新緑のもみじ
名も知らぬ花の亡骸
水辺の岩と かしこまる生鮮の水苔を白くそめている


森に、人が心をいやすのは
生きとし生けるものを育む 森の願いがあるからなのですね


清流の柵(しがらみ)の向こうに
娘がふりかえった
襟元がすずしげな
白地にぼたんの浴衣に 無地の団
[次のページ]
戻る   Point(15)