こぐま座/Lucy
 
思い出を一番から五十六番まで
USBメモリに移動して
一息
私のディスクは空(から)になる
空(から)になった空(そら)に
星が一粒
もう一粒
繋がって
絵を描く
尺取り虫が
一歩 二歩
五歩あるけば柄杓(ひしゃく)
北のはずれの
冷たい星が
ずっと私の道標でした
この深い夜のむこうに
朝(あした)が来ると
信じて待っていた
寒い冬の日も
小さい家で
子どもを育てて
私はすり減っていったのではなく
豊かに増殖していたのでしたが
今 静かに
伸びた蔦を切る
もう一度風媒花の種になり
飛翔する
大熊座
さそり座
はくちょう座
夏の大三角形
群青の空の奥深く
どこまでも
逃げて行く朝(あした)を追って
おはよう
おはよう
二度と会えないとわかっているから
きっとまたすぐ
会おうねなどと言いあって
友の手に
ありがとうの星砂を
さらさらと
かける
行き先は
ペットも飼えない
グループホームだとしても
新しい朝は
クローゼットの奥のくらやみに
こぐま座のように光っているはず

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