Kind Of Blue/ヒヤシンス
闇の帝王がその音色を奏でると、聴衆の動きがはたと止まる。
このトランペットの音は全ての世界を超越していたのだ。
そこに新たな魔王が音色を重ねた時、聴衆はもうその場から逃れる事すら困難だ。
夜の幕はひらけた。闇夜を切り裂き、悪魔の祝祭が始まる。
黄色い月の影を果てしなく追うサックスが心の襞に粘りつく。
誰もが今自分は現実の世界にいるのかそれとも黒い夢の只中にいるのか分からずに、
この悪魔たちの音楽に身を委ねていた。委ねるしかなかった。
妖艶な美酒は疲れた魂に優しい。
紛れも無い真実の夜におどけたピエロはいらない。
紛れも無い現実の世界で後戻りなど出来ない。
相手が誰で
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