テイク・ザ・ドラゴン/済谷川蛍
 
。崖で囲まれたその広場から5キロ圏内は立ち入り禁止だ。ドラゴンの絵が印刷された貴重な地域通貨42万カインドを支払ってこの山に登れる者はごく僅かである。
 「いよいよですね! バーノッグさん」と私を見上げたハートルの愛着に満ちた眼差しに勇気づけられたが、「うん」と素気無く答えた。私たちは山へ足を踏み入れた。花が咲いている。そんな当たり前の光景が妙な非現実感を伴って映るのは山の魔力によるものか、恐れによるものかなどと考えているとハートルがその花の名前を挙げて説明をし始めた。私がどうでもいいと思っているようなことを何分間も喋り続け、少し可哀想に思った。しばらく登山を続けていると前方に黒いフードに身を包
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