ドラァッ!な一日/済谷川蛍
 
爆音が万物を轟かせたかと思うと、ガソリンスタンドの屋根が鍋のように吹っ飛び、巨大な炎の柱が空と雲を焦がした。
 おれはもう負ける気はしなかった。そして、もうやつは全ての力を出し尽くし、へとへとにくたばっていた。全体重をかけた、トドメの一発。

 「ドラァッ!」

 ディーゼルは前輪を浮かせて後ろに吹き飛んだ。貨車はあちこちに飛ばされて大量の石炭を星屑のようにばらまいた。
 そして、今ごろになって、春の嵐のような衝撃波が目に見えない津波のように押し寄せ、石炭の煤煙を全て洗い流していった。


 しばし、おれはそこに立ちすくんでいた。そして、思い出したように後ろを振り向く。少女も、犬も、かすり傷ひとつない。
 そしてもうひとつ、これらのことに比べたら、あまりに下らない忘れ物のことを思い出しそうになったが、それは無視して、今しばらくこの壮大な破壊の跡を、漠然とした一種清々しい気持ちで眺めまわした。
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