海が知っていること/かんな
 


脱ぐかといったら脱がない
深夜の湿度を保った風に揺られながら
海辺をきみと歩く

曖昧なことを
ことばで表現したがらないので
わたしの質問はいつも夜の闇に消えていく

星々だけがきれいで

悲しいわけではなくて寂しいという
ものともどこか異質で
泣くという行為に感情を添わせることなどできないでいる

変わらないものは
どこかに帰るためにある

愛情と比例せず
かといって反比例もしないものも多々ある
曲線が限りなくしあわせに近づいていくだけであったり

ものがたりを探して夕焼けを歩けば
斜陽に映し出された人影が踊るように
わたしときみの自由に換算されるものなどについての

思考だけは限りなく自由

いらないのではなくて必要性を見いだせないだけのもの
そういうものもおもいも
たくさん大気中に飽和してしまっている

脱ぐのかといわれたら脱げばいい
まとわずに抱き合わなければわからないものが多い
海もそれを知っている



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