狂った世界に 独りの男。/元親 ミッド
狂った世界に 独り。
誰もいないのだと この数年思って
生きてきたのだけれども
調子の悪いラヂオから
「 ・・だ・・か・・ いま・・・・か・・ 」
と音声のようなかすれた電子音が聞きとれた。
慌てて 窓を勢いよく開け放ち
遠い水平線に 目を細めてみたけれど
肉眼では 何も捉えることは出来ずにいた。
あの瓦礫の街を越えた どこか遠い場所に
もしかしたら 誰かがいるのかもしれない。
そう思うと いてもたっても居れなくなって
わずかな荷物だけをリュックに詰めて 旅に出た。
狂った世界に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)