湯屋/月乃助
 
わせ ほんのり色づかせ、
それを、じっと世をすてた かたほの詩人がみつめたり、
不死実という あぶなげな果物売りの老女は、行商の
この村の地唄をきかせてくれる そのむこうで、
村人がつたえる 平家が落人の姫の血と 見目麗しい娘が、
絹のような黒髪を洗い、


異形のものたちは誰も 死人のやすらかさで、
湯をあびてゆく


ええ、もうこの湯につかれば 夢見心地で
あの世か 極楽か 時のまにまに ただようようで、ございます


この世での誕生が、死のはじまりなら
あの世への誕生は、生のはじまりとかもうすようで、


ここでは、年取るごとに 若くなっていくのが宿業


ゆなゆな 赤子になって また次の世に生まれ変わるまで
しばし この湯でやすんで いらっしゃいませ






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