湯屋/月乃助
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到来は 雨月の小夜時雨(さよしぐれ)
遠くに鳴神(なるかみ)もあらぶるよう
昔は今 豊葦原の中つ国、その奥山に御霊がたずねる湯屋がございます
姫垣のむこうの山の端に 弦月ほどが美しいと
住みなす者はいわずとも 行合いの者たちもまた
湯をあびに やってくる
相撲取りほどの大女は、
混浴などおかまいなしの 大きな乳房をあらわにし、
時刻表にない バスに揺られて訪れる旅人とか、
酔客相手の片言の日本語をはなす遊女もまた 男の汗をながしに 遅れて湯をすくう
旅籠の仲居はさいごに 背中いちめん 牡丹に弁天さまの刺青で、
花の肌に湯をすわせ
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