おさらい/そらの珊瑚
閉じられた瞼は
眼球にやさしくかけられたさらし布
或いは
フリンジのついた遮光性の高い暗幕
時折
なにかに呼応して
波打つように
揺れる
ベビーカーのハンドルに止まったちょうちょ
公園の樹に光る雨のしずく
湿り気を帯びた風の匂い
犬が吠える
つかめた自分の足の不思議
泣けば
与えられる白い血液の旨さ
笑えば
世界は笑いかえしてくれる魔法
言葉をまだ持たない君は
その瞳に記しているのだろう
そして
精密かつ柔らかな鎧戸のなかで
夜ごとに
おさらいは繰り返されて
さかなであった記憶とひきかえに
君は
ひとになっていく
戻る 編 削 Point(26)