初夏の話/とつき
彼の小説には
火事や焚火や花火など火がよく出てくる
彼と銭湯に行った。ここも火に関係あるね
女神にはまだ遠い番台のおばさんが笑っている
そっくりだね。そっくりすぎてウソ臭い
手配書に似るのは運がいい
熱い湯だったが
湯の熱さよりも壁の絵が気になった
俺のかみさんの描く月はもっと上手だ
月はあんなにちんけじゃない
木星だと思ったが言わなかった
ここは痩せた犬がつながれるような無人駅ではない
チェーンの居酒屋でいっぱい
あまり火を書くのはいかがなものか、縁起が悪い
実は俺は火よりも消火が好きだ。消えないと火ではない
火は美しいが、完全に透明じゃないのが残念だなどとごにょご
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