空の波紋 /
服部 剛
犬が一人きり、吼えている。
見知らぬ国の
誰も行ったことのない森の
ごわごわ風に身を揺する
名も無いみどりの木の下で
その遠吼えは
あまりに切なく
心を貫き、刺すように
真空のそらへ
波紋を広げゆく――
*
その頃、都会の雑踏に塗(まみ)れ
無数の靴音の只中で
立ち止まる、仕事に疲れた男は
ビルとビルの間の青に
ひと時、広がる
空の波紋をみつけた
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