叫喚/ヒヤシンス
 

描かれた肖像画のグレーの瞳を見よ。
額縁が架けられた白壁の感情を見よ。
レースのカーテン越しにこじんまりと佇む庭の花々を見よ。
いつしかテラスはしっとりと濡れているではないか。

応接間に残る昨夜の余韻。
集まった者達のそれぞれの思惑。
縺れて絡まる蜘蛛の糸。
洋棚のスザンナだけが空間の感情を読んでいるのだ。

泣くのはおやめ、物達よ。
君達をないがしろにしている我等人間が悪いのだ。
私には聴こえる。閉じられた空間に響き渡る物達のすすり泣きが。

本当は君にも聴こえるだろう。(ほら、もうテラスはぐっしょりだよ。)
微笑みながら手に入れた物達はやがて時の流れの中で君の冷ややかな視線に晒される。
わかるかい、魂の叫びは人も物も一緒なんだよ。

戻る   Point(1)