かくれるところのない空には/石川敬大
耳のなかに
あらぶる海波が音をたてて打ちよせる
波うちぎわがあって
すぐにきえる影をつくって
雲の列車がゆく
武器をにぎりしめている
ビルのうえには
どこにもかくれるところのない
どこにも角ばったところのない
五月
の
空があって
まもなくやってくる
雨期を
首をながくしてまっている
ビルのような馬の影がのびている
島がある
から
鳥がいる
花が咲いて
草が生えている
虫がいる
にがいものをのみこんだ
ひとを
むかえて
臨終まぎわの心電図の裏がわを
のぞきこむ
犬がいる
にがいひと
いじょうににがいかおの玄関先で
ぼくの
犬が
とほうにくれている
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