河童のおはなし/……とある蛙
 

「銀次のあんちゃんどうしてる」

「銀次のあんちゃん見かけない」

爺は困って黙ってた

爺は悲しそうに黙ってた

「銀次は一昨日死んだんだ」
「銀次は一昨日おぼれ死んだ」
「虐めた河童に殺された」
「虐めた河童が溺れさせた」

河童は叫んで逃げ出した

河童は泣きながら逃げ出した

「おらぁ銀次を殺していない」
「おらぁ全然やっていない」

河童は沼の畔で泣いていた。

もう一度銀次に会いたかった

もう一度銀次と喧嘩したかった

そして、もう河童の相手する者はいなくなった。

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