透き通った女の目 /
服部 剛
目が、後ろから、僕を視ている。
空気に溶けた、透き通った目
の
声がする
(負けないで…)
なんでこんなにもじんわり
ハートに滲み入るのだろう
(どくり…どくり…どくり…)
もう、この世にいない女(ひと)なのに
体の消えた歌姫なのに
(音の無い生(なま)の歌声は
ふいに耳元に囁くのです――)
日々の場面に
どん!
と
足を踏み入れる時
その女の
声援を秘めた熱いまなざしは
不思議なほどに
たよりない僕の背中をぐいと、押し出す。
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