透き通った女の目 /服部 剛
 
目が、後ろから、僕を視ている。 
空気に溶けた、透き通った目 
の 
声がする 
(負けないで…) 
なんでこんなにもじんわり 
ハートに滲み入るのだろう 
(どくり…どくり…どくり…) 
もう、この世にいない女(ひと)なのに 
体の消えた歌姫なのに 
(音の無い生(なま)の歌声は
 ふいに耳元に囁くのです――) 
日々の場面に 
どん! 
と 
足を踏み入れる時 
その女の 
声援を秘めた熱いまなざしは 
不思議なほどに 
たよりない僕の背中をぐいと、押し出す。 







戻る   Point(2)