湿原から草原へ〜(・・猶予。)/ヒヤシンス
 

広大な湿原に風はぬるく、軟体生物のような草がゆらゆら揺れている。
光と影の世界でその生命をしたたかに維持している大湿原。
ここから抜け出す事はできない。
ここでは誰もが勇者に祭り上げられることを嫌う。

しかし時は常に進んでいるのだ。
振り返る者はその湿原の中にもはや戻る道など無い事を知るだろう。
湿原の中、朽ちかけている木の道を覚束ないその足でゆくしかないのだ。
ここでは自由と平等だけは与えられているが、うまく機能しているとは言えない。

本物の偽善者が崇められ、声高らかに平和を歌う時代は終わったのだ。
日々大切なものの為に汗をかき懸命に働く善人が報われないなど・・・。
それでも彼らは強い意志と覚悟とを持って湿原に入り、頑強な道を創り始めている。
 
移ろう時代と人の心。歴史には繰り返されてはならない事がある。
明日は今日になり、今日は明日を変える。
湿原は緑溢れる草原に変わり、爽やかな風に草花がさやさやと美しい音色を奏でる。

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