善と美の幻想曲/ヒヤシンス
朝露が木の葉から滴り、大地へと馴染んでゆく。
朝日を受けて輝く緑も鮮やかな林の中で、僕は貴方に出会った。
貴方は純白のワンピース姿で、はにかみながら大きな木陰に身を引いた。
大きな麦わら帽子だけが、幹の陰から僕の心をしっかりととらえた。
僕等は緑の林の中で、笑い、歌い、踊った。
毎日一緒に、庭のテラスで本を読み、紅茶を飲み、うたた寝をした。
貴方は僕の女神となり、母となり、大地となった。
僕は貴方の忠実な従僕となり、父となり、水となった。
貴方の心が疲れたとき、僕は大地に清い聖水を注ぎ、貴方の全てを潤した。
僕の心が病み、涙にくれるとき、貴方はその大地に全てを吸収してくれた。
お互いが愛という名のもとに結ばれ、大きな幸せに包まれていた。
やがてお互い歳を重ね、幸せの内にその肉体がなくなり、魂は天に召された。
清く美しき魂二つ。鮮やかな天空の花園で蝶となり、愛を育み、深めた。
庭のテラスでは、一冊の本と麦わら帽子が、地上の優しい風を受けて今日も微睡む。
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