禿頭/……とある蛙
は違うではないか
と
この物語の主人公ではない
そのことに気づいた僕は
山道を足早に引き返し、
麓まで辿り着こうとした
せかせかとして汗ッ掻きの僕は
すぐにかの猛禽類に狙われ
頭の天辺を突かれ始めた。
頭に手をやると
大して苦労した覚えがないが
天辺から禿頭になっていた
初夏の太陽が
新緑の葉を透かして
降り注ぐ。
知らない間に老け込んだ僕は
足早に山を下りようとしている。
物語の主人公だと勘違いしたことを後悔しながら
足早に辿り着こうとしている
その昔、朝日を眺めた高さの処まで。
夕陽を浴びながら
ふと自分の姿を沼の水たまりで見ると
それは禿頭のフクロ鼠だった。
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