魚の子/月乃助
{引用=
緑をゆらす
風は、なおらかに こんなにも
美しいものだから
少しばかり
すずろ歩き
季節をむさぼれば
不埒な 出会いが待っている
ちいさな 会釈
往きかったのは、風にうつろう
たんぽぽの綿毛でした
幸せそうに 運命に実をまかせ、
僕もまた この世では、ひと粒の意志をもった
種子にすぎない
それもまた
一夜
三千の変異する細胞
生きるとは、あたたかくあるということでも
柔らかいということでも ないのです
したたかな道のり、だった
環境に適応したのは、はしたない順化であり
それは、けして 進化ではない
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