夏の閃光、記憶の抜け殻/まーつん
 
 焼け爛れた
 五体の絞り出す
 苦悶の声
 聞こえますか?
 水を求めて
 呻きを上げる
 乾きの声
 私達の心に
 響かない限り
 それらは決して
 静まることはない
 三
 たとえいつか
 人の愚かさを証した
 地上の傷跡の痛みが
 忘れ去られたとしても
 セミ達は唄い続ける
 儚い命を燃やして
 今年の夏も
 私達は見るだろう
 抜け殻となった記憶が
 主を求めて立ち上がる姿を
 唄い終えたセミの命が
 沈黙の中に燃え尽きたとき
 世界は何も変わらなかった
 だがそれでも
 止むことのない
 呼び声があり
 
 自らを置き去りにした
 時代の流れを引き留めようと
 
 幹の上で身悶えする
 あの夏の記憶
 
 記憶の抜け殻よ
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