いのちのおむすび /服部 剛
(死にたい)と思った青年が
ずぼり…ずぼり…とふらつく雪道で
北風の吹くままに入った
イスキアの家で
「どうぞ」と置かれた
初女さんの握るあたたかい
おむすびを食べた後、ほっ…として
誰にも言えぬ闇の心を、呟いた。
初女さんはただ静かに、頷いた。
イスキアの家を出た後、青年は
(死にたい)気持が、煙となり
果てない雪の地平につらなる足跡刻み
すでにゆっくり歩み出す、自分を知った。
雪原に、しろい吐息は熱く消え
自らの脈打つ音を、聴きながら
ずぼりずぼり、と彼は往く――
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