ウィリアム・ゴールディングの『蝿の王』/pur/cran
 
ちは見事に模倣しただけなのだ、「紳士的」な英国人を! 大人は疑っていない、戦争が野蛮だとは思っていないのである。植民地戦争には大義名分がある。報復には意義がある。正義は我らにあり、討つべきは蛮族である。
 豚の頭は主人公に忠告する。なぜ豚の頭なのか? 蝿の王が、豚の頭なのか? しかし、それは答えを必要としない。悪は偏在する、と。きみ達は珍しくない。殺し合いをするのは悪いことじゃない。常なのだ。悪いことだとしても、戦争状態は常態なのだ。豚の頭は肯定する。
 きみが少年であったなら、歓迎しよう。ようこそ! 世界は死で満ちている。しかして希望せよ。君が望めば回避はできる。逃げ続けることだ。世に仕掛けられた罠は甘言に潜む。この言葉すら疑え。しかして希望せよ。信頼に足る大人はいる。たった数パーセントに満たないかもしれないが。それを見出す目を肥やすべく、勉強するのが、きみの人生である。
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