煙突と空 /服部 剛
高層階のCafeで
いちめんの窓に広がる
扇の街を
ぼんやりと眺めていた
煙突から
ひとすじの煙が昇っている
灰色の煙はしゅるしゅる
空の青へ
吸われるのを見ていると
日頃濁ったままの心が
いつしか空になってゆく
日々の喧騒から抜け出した
ひと時に
一枚の絵画のような
あの煙突と空を
しばらくここで鑑賞していよう
微かな玩具の軋む音に
まなざしを下ろす、ビルの足元から
たった一両の貨物列車が、今
扇の街の間を抜けて
果てないレールの伸びる未来の方角へ
夢の荷物を届けに
段々小さくなっていった・・・
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