Loto/月乃助
 


山色も褪せる
賽の河原とよぶ 山の端に
鬼がいっぴき 住んでおった

大酒喰らいの 赤鬼

人に化けては 濁酒を飲みにくる
細かなことには、気が向かぬのか
角を 忘れていたりするものだから
わしは、どっこい
それと 見てとれる

うぬは、いったい いくつだ
そう問えば
はて さて
人の心の憎しみや 怒りにやどるという
それならば、人の歩みほどの
歳らしい

戦さや 争いのない 
平らかな時代には、
何もすることがないと 
祠のある暗穴に おお鼾で
幾年も寝ていたりする

そんなとき 人のすがたで、
里にでて 夢がみられるようにと
富札をかう という

あたるのかと
鬼のさしだす ぼろぼろの
いつの世かの 札をみれば

さてさて
金のためではないと
まんざら嘘ではなさそうな
話をきかせる

どこで手にいれたのか
もってきた高価な漆の椀に 酒をみたせば
あおるような飲みほしよう

鬼とわしが酌み交わす
ふたり酒

肴は、旬の遠雷と 晩春の
小雨でござる







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