白い国(小説)/莉音
 
 そこはカーテンで閉ざされた、暗く狭い部屋で、ドアは開けられず、ガラスで閉ざされた小さな窓が一つあるだけだった。無表情な少女が一人、ベッドの片隅で蹲っていて、携帯電話を片手に、足を組んで遠くを見つめていた。少女は意識の境にいた。得体の知れない不安と恐怖とで、半ば気はふれかけ、異常なまでの不安によって、その現実感をどうにか保っているのが限界だった。自分が生きているのかどうかすらわからなくて、小さなカッターで腕を切った。そうすると少しの間だけ、混沌とした世界に鋭い痛みを感じることができて、自分がまだこの世の人間なのだと自覚した。いつからこんなところにいるのだろう。思い出そうとしても分からなかった。まる
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