まんじゅう事件 /服部 剛
熱血上司は耳をまっ赤にして
デイサービスのお年寄りを
皆送り終えた、スタッフの中へ
ふつふつとやって来た。
「なぜ敬老祝いの紅白まんじゅうを
○○さんに届けないいぃ…!! 」
認知症のお婆ちゃんを心配して
残したまんじゅうを渡さなかった
スタッフ一同は
頭上にゆげを昇らせる彼の姿に
しーん…と静まり返った
仕事の後の更衣室で
熱血上司は、僕に言う。
「ハットリさん、どうすりゃみんな
気づいてくれるんだろうねぇ… 」
「うーむ…(たった一個のまんじゅう)が
お年寄りにとっては
お宝なのかもしれませぬなぁ…
あぁまんじゅう恐い、まんじゅう怖い…」
その夜からである。
僕等スタッフの日常に
舞台の幕が上がったのは
毎日々々繰り返す
車→風呂→飯→便所→ゲーム→車
という単調な日々の場面に
ひっそり隠れて後光を放つ
(たった一個のまんじゅう)を
僕等が探し始めたのは
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