夢の絵 /服部 剛
ごろごろ、ぴか、どかーん
遂に熱血上司の雷が、頭上に落ちた。
焼け焦げた姿のまま、そろ…そろり
逃げ帰ろうと思ったが
見えない糸に背中を引かれ
くるり、と引き返す。
熱血上司の顔が鬼瓦になっている
畳の部屋に戻り、互いに坐り
少しの間、腹を割った。
家に帰って、嫁さんの前で
両手を皿にしてめそめそのふりをしつつ
仕事というものの重さを思い
布団に小さく包まって、寝た。
夢の中では
怒った上司とちびった俺の場面が
全て二重の線で描かれ
少しぼやけた絵になり
一枚の額縁に納まり
誰もいない美術館の壁に、掛かっていた。
(そうだ、出来事は皆一重の線じゃない…)
目が覚める。
網戸の外の夜明けはすでに
蝉等がかなかな歌ってる
布団の上で、のびをする。
両手の拳をエイとあげる。
顔を洗い、飯を喰らって、外へ出る。
今日という日の出来事の
上辺の全てをひっぺがす
あの夢の絵を、視る為に。
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