鳥山が立つとき/草野大悟
鳥山が立つとき
海の深層には
おおきな迷いが泳いでいる、と
あの日 あなたは教えてくれた
あなたの育った長崎の海は
いつも
あなたを包み込んで
すべてを許し 微笑んでくれた
そんな海の深層の大きな迷いに
あなたは気づくことなく二十歳になり
ふる里を離れた
東京というところで新婚生活を始めたあなたは
大きな躰といかつい顔と細やかな神経をした俺に
外見と内面の大きなギャップがあなたの魅力で
私もそれに惹かれて結婚した
私、面食いじゃないし
そう 平然と言い放ち
俺の口をアングリ開けさせたのだった
鳥山が立つとき
海の深い 深いところに
あなた と おれの真実が
いまも泳いでいる
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