桜並木の川 /
服部 剛
山桜を眺めると、落ち着いてくる
白い花々は、何処かうつむいているから。
山桜を通り過ぎると、落ち着いてくる
派手さは無く、思いをそっと抑えているから。
遥かな国の方向へ
さらさらきらめき、伸びてゆく
川沿いの並木道を
少し屈んだ小動物のような翁(おきな)の背中は
ゆっくり早く、遠のいて――
川を横切るてふてふを
瞳のレンズに映す青年の心は
らんらんと燃えながら
遠い翁の往く方へ、歩み始めた
戻る
編
削
Point
(8)