生き残った夕暮れがいる橙の窓の灯/あおば
柄の俄将校で
およそ実戦向きとは考えられない痩せ男
それでも、一人でも兵を失いたくないからと
いつでも平静を装って
夕暮れのランタン明々と輝かし
無線の暗合指令を読み解きながら
車の整備にも注意を払い
車軸からの僅かな油漏れをも指摘する
真っ暗で危険な行程に思いを凝らし
陽が差して
ジグザクの山並みを美しく照らすやいなや
先頭を切ってアクセルを踏み込んだ
プルトップを開けるとオレンジ色が溢れたがっている
引っ張ったり押したりするから溢れ出すしかないのだと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)