三十万分の一の確率に勝った話/フゥ
 
最近よく父のことを思い出す。私が現状、ときにしんどいこともあり、でも楽しいことも沢山あり、負けたくないと思うからかもしれない。


このままではおそらく病死、あと一年もつかもわからない父に、私の骨髄をあげたかった。もうそれしか方法は無い。
骨髄移植の適合率は、兄弟なら四分の一だが、親子間では恐ろしく低いらしい。一%にも満たない。ほぼゼロ。具体的には、三十万分の一の確率だと、白い小さな部屋で、医者から聞かされた。壁のホワイトボードには半透明のレントゲン写真が貼ってあり、よくわからない記号のような文字がカルテに綴られている。彼の座った低い丸椅子が、四十五度回転して私の方を向く。血液検査を受ける
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