黒いシャボン玉/元親 ミッド
 

タクシーの群れをすり抜けながら

赤信号の川へと踏み出した。

一陣の春の夜風に

かじかむシャボン玉、ぱちんと消えた。



野良犬が見てた。

蜘蛛たちも見てた。

ギターも、段ボールも見てた。

一瞬だったけど。

ポケットの中の弾丸は、シリンダーには

ついに込められなかったけど

散らかった街に響いた怒りの銃声は

乾いた音を2発

パンパン、と響かせた。

空砲だった。



時計が止まったのは、わずかに3秒。

街は何もなかったように動き出す。

そうして相も変わらず同じ夜を繰り返す。

今夜も、明晩も、その先も、ずっとずっと

きっと何も一切変わらないんだろう。



たまに野良犬は思い出すんだ。

あのシャボン玉は、消えてしまって

それから何処へ行ったんだろう?
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