彼と彼女の日常/石田とわ
 
たしは彼女のそばで号泣し、彼女は最後まで泣かなかった。


こうして彼と彼女の日常は幕を閉じた。

彼も彼女も心まで病魔に侵されることがなかった。
現実を受け入れ、死を怖がることも神聖化することもなかった。

「いつかは誰でも死ぬんだよ」
病状を不安がるといつも彼はわたしにそう言って、笑いかけた。

わたしは彼と彼女の子供に生まれてきた事を誇りに思う。
彼はだれよりも彼女を愛した。
彼女はだれよりも彼を愛した。

その二人に愛され、慈しまれたわたしは誰よりも幸せだ。


彼はもういないが彼と彼女の日常は今もわたしの中で生きている。

















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