彼と彼女の日常/石田とわ
少しずつゆっくりと、そして確実に時間は過ぎた。
「どうも立てなくなったらしい」
退院してから半月たった彼女の休みの日の朝、彼はつぶやいた。
それまでは彼もなんとか立って歩くことができた。
トイレに行くことも、本を取ることも自力でできたのだ。
彼女はただ、うなずいた。
私はそんな彼を直視できなかった。
いつも一緒に買い物に行っていた。
毎晩、料理を作ってくれた。
そんな彼がもう立つことができない、そのことがただ悲しかった。
けれど立てなくなっても彼は変わらなかった。
悲嘆にくれることもなく、泣きごとひとつ言わなかった。
煙草を吸い、
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