彼と彼女の日常/石田とわ
わるとテレビの前に陣取る彼女。
彼と彼女の時間がはじまる。
これから朝までDVDを見るのだ。
毎晩3本、これが退院してからの彼と彼女の日課だった。
彼女は知っている、彼が自分の帰りをずっと待っていることを。
本当は仕事に行って欲しくないと思っていることを。
彼は知っている、彼女の身体が疲れていることを。
向けられる笑顔のうらに涙があることを。
そんなふたりが羨ましくもあり、かなしくもあった。
彼女の睡眠は朝6時から点滴の終わる11時までだ。
あんなに寝坊だったのにこの時間にはぴたりと起きるようになった。
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