彼と彼女とわたしの海/石田とわ
「釣りに行かないか」
彼がそう言いだしたのはめずらしく彼女が午前中に起きだしソファで寝転びながら、
いそいそとインテリアと家具の本を広げた時だった。
彼女はマンション購入が決まってからこの本を毎日飽きずに眺めている。
彼女は黙って彼を見つめる。
「行かないか?」
彼がこんなことを急に言いだすのはめずらしい。
いつもなら前日に予定を立てるのに。
「行くわ」
彼女が即座にそう答えたことがなんだか意外だった。
本をソファに投げ出し「着替えてくる」とリビングをでる彼女に
「わたしも行っていい?」と声をかける。
「もちろん
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