彼と彼女とふくれっつら/石田とわ
キッチンからいい匂いが漂ってきた。
大掃除の今夜は彼の得意なビーフシチューだ。
「おいしそうだよ」
リビングのソファでふて寝をしている彼女に声をかけてみるが
返事がないところをみるとまだふてくされているのだろう。
原因は大掃除の「新聞だし」だった。
そもそも家ではゴミ捨ては彼女がやっている。
が、めんどくさがりでおおざっぱな彼女はこまめに新聞を
だしていなかった。
大掃除の今日それぞれを分担し、キッチンから浴室まできれいに
汚れを落とし、片づける。
リビングと本整理、キッチンは彼の担当。
彼女は
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