彼と彼女と綿ぼこり/石田とわ
 
りしたような顔でありがとうと彼女は心底うれしそうにわたしを見る。
あー、いっつもこれにやられるのだ。
わたしと彼の弱点は彼女のこの笑顔だ。
          
それでもわたしは彼ほど甘くはない。
きちんとやるべきことはやってもらわないと。
          
「明日は自分でやってよね」
「はーい」

間のびした彼女の返事に小さなため息をつく。


彼女はなんてしあわせ者なんだろう。

好きな仕事に打ち込み、家の事は彼に任せっきり。
彼はいつでも定時に帰宅し、彼女の帰りを待つ。
わたしは周りからは「しっかりもの」と呼ばれるくらい、しっかり育ち
勉強もまぁまぁ出
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