彼とわたしとぶり大根/石田とわ
今夜も彼はおいしそうに食事をする彼女を本を片手に見るのだろう。
魚屋さんをラストにわたしたちの買い物は終わり家に着くとお昼だった。
彼は買ってきた食材をきちんと小分けにしてそれぞれしまう。
あるものは冷凍庫へ、あるものは明日の夕食のためにチルドルームへ。
わたしは傍らでたまごをパックから取り出し、冷蔵庫へ並べる。
「昼は蕎麦でいいか?」
頷き急いでと本棚へと向かう。
彼と秘密の時間を共有するための儀式だ。
歩いて5分。
二人で本を片手に「行きつけ」の蕎麦屋の暖簾をくぐる。
彼は冷酒とざるそばを
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